一晩中降り続いた雨は、朝になっても止む気配はなく

陰鬱に世界をくすませ、熱を奪って冷え冷えと

救いの無い悲劇の終幕に鳴り止まぬ拍手のような

世界中を震わせる雨音を

ボクの頭の中いっぱいに染み渡らせながら…




Applauding -アメ ノ オト-




ボクの少し前を黙々歩いていくキミの横顔を見上げながら

胸の中に溜まっていく痛みに耐えきれなくなりそうで

ボクは雨に湿った口びるを噛み締める

濡れそぼったキミの前髪が白く長く血の気の消えた頬に重く落ちかかるから

冬を前にした針葉樹の葉先の垂のようにポタポタ透明な涙をしたたらせるから

キミがエクソシストになった日の記憶をカーテンコールの役者のように引きずりだしてしまうから



キミが

哭いているのかもしれないと思ってしまうから




こんな冷たい雨がふるくらいなら いっそ凍って雪になればいいのに

キミが雨に打たれるのを見ていることしか出来ないなら

自分が白い世界で凍えてなくなる方がいい

キミが傷むのを見守ることしか出来ないのなら

自分の痛みが降り積もる方が

そのほうが、どんなに…


けれども舌にのせられる明るい言葉は見つけることが出来ずボクは

ズルいボクは

白い髪を隠す為のフードを深く被り直し、恐れながら尋ねる

その言葉がキミをキミから奪ってしまうことを知っていながら

それでも耐えきれずに



クロウリー

寒くないですか?



大丈夫である

アレンは寒くないであるか?



返事はすぐにかえってくる。

キミは死の淵から離れ、ボクのところに戻ってくる

大丈夫ですよとボクは笑い そうして

…こうして


二人また歩き続ける

雨の中を


終わらない悲劇の喝采を浴び続けながら…




-ENDE-20091011