目の前に死塊がよこたわっている

気の毒な私の犠牲(ひつじ)

片手までは数えた

片手までは覚えている

だが 

私にはもうわかる

数えることの無意味さが

 

 

 

COUNT THE SHEEP (ネムリニツクマデ)

 

 

 

血まみれのからだ

血まみれの心が歓喜に震えている

いつだって長くはつづかない

興奮は去り ごう慢が退いていく

残るのは怖気をふるうような罪の味と

吐き気がする孤独

 

 

衣服を脱ぎ捨ててシャワーを浴び

凍てる水で口を雪ぎ 体を漱いで けがれをぬぐい

たぎりをねじ伏せても

焼けるような絶望だけは剥がす事はできない

 

皮膚を月にさらしたまま

暗い窓から遠く階下を見下ろし

エリアーデが 屍体を埋めるのをぼんやりと眺めつづける

死まみれた犠牲は見ず 貴女の肢体だけに 酔う

貴女の美しさ だけに

 

祈りをあげ 

犠の羊(にえのひつじ)に終のすみかを与える優しいエリアーデ

墓碑を立て 

私に罪のありかを教えてくれる残酷なエリアーデ

 

墓碑に向かって祈るあなたが どの神に願いを乞うのか私はしらない

けれど

いつかその神こそが私を罰し 私から貴女を取り上げることを夢みる

ふるえながら

絶望しながら

望み続ける

・・・・・神様どうか 私を滅して下さい

・・・・・私が彼女を獲る(失う)その前に

 

 

 

片手までは数えた

片手までは覚えている

が もう意味はない

もう決めたことなのだ

エリアーデ

あなたを殺さないために 

あなた以外を殺す

たとえ世界のすべてを屠ることになっても

あなたを 生かすために

 

そう決めたとき

私は罪そのものになった

 

 

 

月灯りに冷えきったベッドにひとり臥し

眼を閉じて漆黒を追い払う

そうして

私は数えはじめる

この先の闇に無限によこたわる

私の

羊達の数

 

 

<END>

2008.6.20