再び肉体の感覚が戻ってくる、がこれはあなたの身体では無い。
夢を見る機械が記憶している『誰か』の肉体だ。
身体の持ち主の五感との融合が完璧に終わっていないのか、まだ身体に力が入らない。
ぼ〜っとしたまま一歩踏み出すといきなりすぐ近くを馬車が通り抜けた。
『ばかやろう!気をつけろ!』
怒声が駆け抜ける…
「お、おいアミル。大丈夫か?」
足下で相棒の錫犬の声がした。
「あ、ああ大丈夫だ。ちょっと目眩がしたんだ」
あなたは(あなたはアミルという人物と融合している)視力が回復するの待って周囲を見渡した。

街だ。
中世期頃の西の国だろうか?あなたは広場の大通りに立っている。足下にはあなたの親友の錫犬(錫でできている犬だから錫犬だ)が心配そうに見上げている。
「目眩かあ、だよなあ。4日も食ってないもんな。街にたどりついたんだし。とっとと、仕事見つけて旨いものにありつこうぜ」
「うん、そうだな」
あなたは火薬のどっさりつまった商売道具の鞄をしょいなおし、相棒を抱え上げると、馬車道をよけて歩き始めた。

南へ
北へ